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実は知らない人が多い「建て替えができない土地」がある!?前道何m以上・接道何mから建築可能なのか
住まいのお役立ち情報2024/08/13
住宅を購入する際は、土地の広さや間取りに注目しがちですが、いざ住み続けた家を建て替えたい・売却したいと検討し始めたときに、「建て替えができない土地」が存在します。古家付きの土地を購入して建て替え予定の方は要注意です。購入してから「こんなはずじゃなかった…」と後悔する前に、土地の基本について知っておきましょう。
建て替えができない土地「再建築不可物件」がある
ご実家を相続したり、古家付きの土地を購入して建物を解体し、再建築しようと考えたところ、実は建て替えができない土地だった、というケースがあります。建築基準法の接道義務を満たしておらず、建物の建て替えができない土地のことを「再建築不可物件」と言います。
再建築不可物件は、周辺の同じ広さの土地よりも安いことが多いため、思わず購入したくなりますが、新たに家が建てられないので、古家の解体後の建て替えが目的であれば、そもそも購入する意味がありません。
再建築不可の物件の多くは「建築基準法の接道義務」を満たしていない土地です。
それでは、「建築基準法の接道義務」について見ていきましょう。
建築基準法の接道義務
不動産売買や相続で手に入れた土地は、接道義務を満たしているか確認することが大切です。条件を満たしていなければ、再建築できません。
接道義務とは?
「接道」とは建物を建てる敷地に接している道路を指す言葉です。建築基準法では、建物の敷地は、建築基準法上の道路(原則として幅員4m以上)に2m以上接していなければならない という決まりがあります。
路地裏の土地や、京都独特の土地「うなぎの寝床」のような間口が狭くて奥行きが長い土地でも、道路に面する通路の幅が2m以上あれば、建築が可能です。
建築基準法 ≫参照:京都市情報館HP「https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000271510.html」 |
再建築不可物件の例
原則として、接道義務を満たしていない敷地に建物を建てることはできません。
すでに建物がある場合でも、増築や再建築は禁止されています。再建築不可物件を取得した場合、新たに家を建てることはできませんが、既存の家をリフォームして住み続けることは可能です。
①道路に接していない敷地や道路に接している道の幅が2m未満の敷地
②接している道路が建築基準法に準じた道路ではないため再建築不可
建築基準法が制定されたのは昭和25年(1950年)、また都市計画法は昭和43年(1968年)です。そのため昭和25年以前に建てられた住宅や、都市計画区域などに指定される以前に建てられた住宅の中には接道義務を果たしていない物件が存在します。
不動産情報サイトに建築不可物件を掲載する場合、「建築不可」や「再建築不可」を明示する決まりがあります。それらは備考欄などに明記されていますので、古家付き土地の購入を検討している方は、確認しておきましょう。
▼不動産広告 土地の場合は「建築不可」と、中古住宅等の場合は「再建築不可」と明示しなければなりません。 〈参照〉公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会 |
接道義務の例外
接道義務を満たしていない敷地でも、建て替えることを可能にする例外があります。
①2頁道路・みなし道路
道路の幅員は4m以上あることが原則ですが、接している道路の幅が4m未満の土地でも必ずしも家を建てられないわけではありません。
昔からすでに住宅が立ち並ぶ地域では、4mよりも狭い幅の道路が多く存在します。こういった場合は、建築基準法が施行された日(昭和25年11月23日)、または、その土地が都市計画区域になった時点で、既に家などの建物が建っていた場合は、「敷地のセットバッグ」を行うことで、家を建てることができます。
このような道路を「2項道路」(法43条2項道路。建築基準法の43条2項から)または、「みなし道路」(法43条2項2号道路)といいます。
▼道路は幅員4m以下であっても下記の道路は「2頁道路・みなし道路」として、接道義務における道路として扱われるため、一定の条件をクリアすれば家を建てることが可能です。 |
●建築基準法施工時(昭和25年)すでにあった道路 ●すでに建築物が建ち並んでいる道路 ●特定行政庁が指定した道路 |
「セットバッグ」とは、敷地や住宅を前面道路から後退させ、後退させた分の土地を道路として提供することです。道路を挟んで宅地が並んでいる一般的な場合は、道路の中心から平等に土地を分けます。
不動産会社から「要セットバック」と記載された土地を購入し、住宅を建築する場合や建て替えを行う際には、建築基準法で定められたルールに従ってセットバッグを行わなければなりません。
②建築基準法第43条第1項、ただし書きの規定に基づく許可
行政により、要件を緩和している地域もあり、内容は地域により異なります。
▼建築基準法第43条第2項第2号(旧第43条第1項ただし書き)の許可を受けた通路についても、条件によっては建築許可が出る場合もあります。 |
●敷地の周囲に公園や広場などの広い空き地を有するなど基準に適合する ●敷地が農道などの公共の道(幅員4m以上)に2m以上接している ●避難経路や安全確保のために必要な道路に準ずる道に接している |
京都市では密集市街地対策等の取組における「優先的に防災まちづくりを進める地区」において、当該許可を受けた敷地及び通路の閲覧が可能です。具体的な内容については建築指導課窓口にてご相談ください。
接道義務の必要性
地域に住む人たちが安全で快適に生活できるよう、建築基準法でルールが定められています。
普段の生活はもちろん、緊急車両の通行や災害時の避難路を確保するため、路地上の土地でも人が通れるように、道路に面する通路の間口が2m以上求められています。
建物が火事になった場合、一般的な消防車両の幅は約2m、救急車の幅は1.9mです。接道義務で最低限2mを確保することで、緊急車両の通行を確保でき、地域の人々の安全につながります。火事や急病が発生したときにも消防車や救急車がスムーズに現場に駆けつけられるように、という目的があります。
接道を確認する方法は?
土地の接道義務に関わる道路は、建築基準法で認められた道路であれば、公道でも私道でも構いません。ただし、見た目は道路であっても、建築基準法上は道路とは認められない通路のケースがあります。
建築基準法上の道路であるかや、公道の幅員は区役所などの建築指導課窓口で調べることができます。
接道義務の条件を満たさない土地を購入した・取得した場合
①再建築不可物件をリフォームして再利用する
再建築不可物件は、増築や新たに家を建てることはできませんが、既存の家をリフォームして住み続けることは可能です。
②セットバックする
「2m以上接道はしているものの前面道路の幅が4m未満である」という場合には、敷地のセットバックをすることで、幅員の条件を満たせるようになるケースもあります。
③隣地を買い取る
▼前面道路が建築基準法第42条に規定する道路の場合、隣地を購入して、接道2m以上の条件を満たせば、再建築が可能となります。
▼前面道路の幅員が4m以上あったとしても、接している道路が建築基準法に準じた道路の場合、再建築不可物件です。建築基準法上の道路に接する隣地を購入することで、再建築可能になります。
接道義務を満たしていない土地でも、このように条件をクリアして建物を建てる方法があります。
ただし、申請したからといって必ずしも認められるわけではありませんので、行政に確認してから申請をしましょう。
まとめ
新たに家を建てる際は、法律やルールを確認してから計画を立てる必要があります。「建築基準法」では、建物を建築する際、敷地と道路が連絡していなければならない「接道義務」が規定されています。
接道義務とは、「幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならない」というルールです。建築基準法ができた昭和25年以前に建てられた家や、都市計画区域など(昭和43年)に指定される以前に建てられた家の中には、接道義務を果たしていない物件が多く存在します。
建築基準法の接道義務を満たしていない土地を「再建築不可物件」と言い、建物の建て替えや増築ができません。
接道義務を満たしていない土地の購入や売却を検討している場合は、まずは役所や不動産会社へ相談してみましょう。古家付き土地の購入など、後悔しないよう慎重に検討しましょう。
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